2003年11月発売
A5判242ページ(二色刷)
販売価格920円(
税込)

はじめに

日本人の英語運用能力の貧しさを指摘する場合、様々なポイントがあるが、日本人にとって意外な盲点となっているのがこのtwo-word verbsだ。日本で教えているネイティブの英会話教師も、日本人の英語表現の貧しさを指摘する際、必ずこれを話題にする。実際、英会話学校に通っている人の多くが、「あなたはボキャブラリーが少ないですね、もっとボキャブラリーを増やす努力をしなさい」と指摘された経験を持っているはずだ。
日常会話や留学、あるいはそれらにおける能力が試されるTOEICやTOEFLなどで要求されているのはこのtwo-word verbsの運用能力なのだ。なぜならこれは彼らが日常生活会話で使う70%前後をカバーすると言われているからだ。
この能力が極端に欠落しているのが日本人の現実といえるだろう。
これは難しい単語ばかりを丸暗記せざるを得ない受験勉強の悪影響とも、あるいはこれらをイディオム(慣用句)だとか、2語動詞だと言い、本質的なことを教えずに丸暗記の対象としてきた華麗な成果?と言えるが、何より日本人の英語学習に「英語は英語の発想でとらえるべきだ」という視点が根本的に欠けていることにある。
「英語は英語の発想でとらえなければならない」という当たり前のことを実践した始めての学習書と言える。

                        2003年11月
                          中嶋太一郎著


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この本の特色

(PART-1) 英語は英語の発想でとらえなければならない

(1) 英語の発想でとらえるということ

●どうしてput offが「延期する」などの意味になるのか

T
: さて、put offと言えば、どんな意味を思い浮かべますか?

S: 「延期する」「消す」「止める」、私が覚えているのはこんなものです。

T: でも、putの意味は「置く」、offを「から」などと覚えているんだろう。その意味から、どうして「延期する」「消す」「止める」などの意味になるか考えてみたことがありますか。

S: でもこれらは熟語だから、そのまま覚えるしか仕方がないと思うんですけど。学校時代にもそう習いました。

T: たいていの人は熟語、つまりtwo-word verbsというものは、それらしき日本語訳を結びつけて丸暗記することだと考えてるんだね。でもそんな学習では、暗記しては忘れ、忘れては覚えるといった無限暗記地獄に陥る。大切なことは、英語の発想でとらえることなんだ。

●英語の発想でとらえるということ

T
: 日本語の意味では「延期する」「消す」「止める」となるが、英語ではputとoffだけが使われているだけだ。このputとoffの意味をきちんと整理しておかないと、いくら「延期する」「消す」「止める」と覚えてもいつまでもその本質は理解できないよ。

S: 確かにそうですね。日本語の意味はまったく違うものね。

T: 英語の発想では、putは「あらしめる」、またoffは「急速離脱・中断」の意味を持っている。このことをしっかりと確認してください。

S: 「あらしめる」というのはどんな意味ですか?

T: そうね。若い人にはすでに使われていないことばかもしれないね。ぼくがある大学でTOEIC試験の講座を受け持っていた時も、よく同じ質問を受けたよ。そう、ここでは「ある状態にさせる」とでも考えてください。
つまりput offの本質的な意味は、「ある対象を急速離脱・中断の状態にする」ということなんだ。そのある対象を「会議」とすれば、それは「延期する」、あるいはその対象が、「火」とすると「消す」、あるいはその対象が「ガス」とすると「止める」ということになる。しかし重要なことはこれは日本語の発想からの訳語に過ぎないことだ。次の例を見てください。これらは本書にあげられた例文だ。P173参照

  (1) Let us put off our meeting till he comes back.
    私たちの会合は延期しましょう/彼が帰ってくるまで

  (2) Don't forget to
put the lights off.
    明かりを消すのを忘れてはいけないよ

  (3) Please
put me off at the next stop!
    次の停留所で降ろしてください!

  (4) Anxiety
put him off.
    彼は不安で(仕事などに)身が入らなかった

  (5) The smell
put me off.
    私はそのにおいにうんざりだった

  (6) The accident
put him off drinking.
    その事故が原因で彼は酒を飲まなくなった

T: どれもが、「ある対象を急速離脱・中断の状態にあらしめる」となっていることがわかりますか。

  (1) 「会議を急速離脱・中断の状態にあらしめる」
  (2) 「明かりを急速離脱・中断の状態にあらしめる」
  (3) 「私(me)を急速離脱・中断の状態にあらしめる」
  (4) 「彼(him)を急速離脱・中断の状態にあらしめる」
  (5) 「私(me)を急速離脱・中断の状態にあらしめる」
  (6) 「彼(him)を急速離脱・中断の状態にあらしめる」

T:「英語は英語の発想でとらえなければならない」というのは実はこのことだ。英語は単にput offだけでそんな表現を可能にしてしまう発想をもった言語なんだよ。

S: そうか。私たちはputやoffなどに安易な訳語を当てはめて覚えてしまったこと、またそれらでできているput offという熟語はまったくそれらとは別個のことだととらえていることに問題があるんですね。

T: どちらの方法も、実は英語を日本語の発想で処理しているのに過ぎないということだ。

S: put offという熟語が日本語訳では「延期する」「消す」「止める」など、ほとんど関連がつかない意味となっていても、英語の発想では本質的には同じなんですね。

T: そうなんだ。それがとても大切なことなんだ。たとえ丸暗記してもそれだけのことで、英文を読解する場合には少しは役にたつかもしれないが、speakingやliteningの場面ではほとんど役だたないと思うよ。

(3) 物理的な位置関係が心理的な状況にも類推される

●心理的な状況にも類推されるということ

T
: 基本的な動詞と方位語を組み合わせることによって様々な表現を可能にする、これが英語の発想だ。少なくともこれが日常生活に多用される彼らの口語とも言ってもいい。

S: 英語の理解には方位や位置でものごとをとらえることが不可欠だということはちょっとわかってきた感じがしますが、それが「心理的な状況にも類推される」というのはどういうことですか。

T: そうそれを説明しないといけないね。英語を学習する場合にはとても大切なことだからね。でもこれも英語だけの特色ではなくて、日本語にもあるんだよ。先に物を「持ち上げる」という日本語の方位を使った表現をとりあげたが、その「持ち上げる」対象が人だとどうだろうか。この場合には、位置的に人を持ち上げるという意味のほかに、人を「よいしょする」する表現となることもあるね。「私をそんなに持ち上げないでよ」といった感じでね。また、位置的に「見上げる」は、「見上げたものだ」と人をほめたり、「見下げる」が「見下す」「軽蔑する」などの場合にも使われる。

S: それが「心理的な状況にも類推される」ということなんですね。

T: そうだよ。先にあげたput off (1)?(3)の用例は「明かりを消す」「降ろす」などの意味を表し物理的な位置関係を表しているが、(4)?(6)の用例では「身が入らない」とか「?しなくなった」「うんざりだ」の意味となっている。これらの表現には、比ゆ的転用(メタフォー)がなされているんだ。要するにこれは「ものなぞり」だ。メタフォーによって単なる物理的な位置関係を心理的な状態まで高めるという英語の発想を知らないでいくら英語と格闘しても絶対に勝てないということだよ。
また次の例は、forwardを使っているが、位置的には「前方にいる」という意味だが、メタフォーでは「でしゃばりだ」ということになるんだ。確かに「前に出ようとする人」は「出しゃばりだ」とも言えるね。

   She is forward.
   出しゃばりだ

S: それなら、forwardの反意語であるbackwardを使うと、「内気だ、臆病だ」となるんですか?

T:その通りだ。それが「進化する英語学習」だよ。一つのことを学んだら、それを類推させていく。これが語学の学習だよ。熟語丸暗記の学習では絶対にこのような学習はできない。

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