「〜しなさい」「〜してはいけない」といった命令形は、直接的な表現だ。言葉も簡単で理解しやすい。だから子どもたちが幼いうちは親はそんな表現を多用する。しかし子どもの成長にともなって、親は少しずつ表現を変化させる。いつまでも直接的な表現では微妙なニュアンスが伝わらないし、そもそも直接的な表現だけでは人間としての進歩がないことになる。
ただ、とても大切なのは、表現が多様になっても、命令形で身についたフレーズはイメージとして彼らの身についているということだ。
それでは親の直接的な命令の表現が、微妙なニュアンスをつけ加えた表現に変化していく例を見ていただこう。親はさまざまな状況や場面に応じてこれらを使い分け、子どもはそれを学んでいくことになる。
| You should 〜 |
あなたは〜するべきです |
| You had better 〜 |
あなたは〜した方がいい |
| You must 〜 |
あなたは〜しなければならない |
先にあげた命令文(【イメトレNo.9】【イメトレNo.10】の「子どもの頃よく耳にする命令」)に、これらYou
should. You had better, You mustといったフレーズをつけて表現してほしい。
ちょっと例をあげてみよう。
| 例1 You should「あなたは〜するべきです」を使って |
You should be more careful.
あなたはもっと注意するべきです
be kind to others.
:
wash your hands.
listen to me. |
| 例2 You had better「あなたは〜した方がいい」を使って |
You had better be
more careful.
あなたはもっと注意した方がいい
be kind to others.
:
wash your hands.
listen to me. |
| 例3 You must「あなたは〜しなければならない」を使って |
You must be
more careful.
あなたはもっと注意しなければならない
be kind to others.
:
wash your hands.
listen to me. |
● まったく同じノリで
単純な命令形を覚え、それに微妙なニュアンスをつけ加えるために You shouldや You had better
などの一群のフレーズをつける。英語の発想はこのように単純なものであり、その発想を身につけることができたら、自然にその他のさまざまな表現にも拡大していけることになる。言葉は単純なものから複雑なものに展開すべきであって、決してその逆ではない。
● 禁止の命令文も表現が拡大する
次に Don'tで始まる命令文に対応する一群のフレーズを紹介しよう。
お気づきのように先に登場したものに not をつけた表現だが、これらには微妙なニュアンスの違いがある。
| You should not 〜 |
あなたは〜するべきではない |
| You had better not 〜 |
あなたは〜しない方がいい |
| You must not 〜 |
あなたは〜してはいけない |
ここでは、下のものほど強い意味となる。You must not は最も強い禁止の意味を持ち、had better は、「〜した方がいい」「〜しない方がいい」と日本語に訳しているが、「そうしないとやばいことになるよ」といった少し脅迫的な意味を含み、Don't
で始まる命令形より意味が強い。また shouldは日常会話でよく使われる普通の表現だ。
ここでも先にあげた禁止の命令文【イメトレNo.11】【イメトレNo.12】にこれらのフレーズをつけて表現してみてほしい。
| 例1 You should not「あなたは〜すべきではない」を使って |
You should not be afraid of me.
あなたは私のことを怖がるべきではない
be angry with me.
:
go after the cat.
watch TV too much. |
| 例2 You had better not「あなたは〜しない方がいい」を使って |
You had better not be afraid of me.
あなたは私のことを怖がらない方がいい
be angry with me.
:
go after the cat.
watch TV too much. |
| 例3 You must not「あなたは〜してはいけない」を使って |
You must not be afraid of me.
あなたは私のことを怖がってはいけない
be angry with me.
:
go after the cat.
watch TV too much. |
● 子どもはいつしか命令形を逆手にとって逆襲する
親から始終「〜しなさい」「〜しなければならない」と言われている子どもは、それを逆に使って親に尋ねることになる。
| Should I 〜? |
私、〜するべきですか? |
| Had I better 〜? |
私、〜した方がいいですか? |
| Must I 〜? |
私、〜しなければなりませんか? |
以上の表現を、先にあげた【イメトレNo.9】【イメトレNo.10】の命令文を使って試してみよう。
| 例1 Should I「私は〜するべきですか?」を使って |
Should I be more careful?
私はもっと注意するべきですか?
be kind to others?
:
wash your hands?
listen to me? |
| 例2 Had I better「私は〜した方がいいですか?」を使って |
Had I better be more careful?
私はもっと注意した方がいいですか?
be kind to others?
:
wash your hands?
listen to me? |
| 例3 Must I「私は〜しなければなりませんか?」を使って |
Must I be more careful?
私はもっと注意した方がいいですか?
be kind to others?
:
wash your hands?
listen to me? |
ただし、主語が I になり、「自分の手を洗う」「あなたの言うことを聞く」ということだから、your hands や
me は、それぞれ my handsやto you などとなることに注意してほしい。
| You wash
your hands. |
→ I wash
my hands. |
| You listen
to me. |
→ I
listen to you. |
| You put
on your pajamas. |
→ I put
on my pajamas. |
| You put
away your toys. |
→ I put
away my toys. |
| You
take off your shoes. |
→ I
take off my shoes. |
● これが英語の発想だ !
日本語と英語の発想の違いを汽車にたとえて説明しよう。
英語の発想では、主体(主語)と情緒的な意思は機関車であり、行為や状態を表す部分は客車だ。つまり、英語では、機関車だけでその主体と情緒的な意思を宣言してしまい、客観的な行為や状態を表す客車部分は機関車と切り離されている。これが英語の発想だ。
一方日本語の発想では、機関車そのものが分離されていて、先頭の機関車は主体(主語)で、情緒や意思を表す部分は最後部におかれる。いわば二重連の機関車が引っ張っているようなものだ。したがって日本語では、最後まで聞かなければ、「〜しなければならない」とか「〜はしてはいけない」といったことはわからないことになる。また、動詞と目的語の語順も異なる。
| [英語の発想] |
|
| [機関車] |
[客車] |
| 主体 + 情緒的な意思 |
+ 行為 |
You must
(あなたは〜しなればならない) |
wash
your hands
(手を洗う) |
| [日本語の発想] |
| [機関車] |
[客車] |
[機関車] |
| 主体 |
+ 行為 |
+ 情緒的な意思 |
あなたは
(You ) |
手を洗わ
(your hands wash) |
ねばならない
(must) |
英語の発想では、機関車の部分に主語と意思、情緒、時などを表すフレーズがきて、これによって次に連結される客車。つまり動詞フレーズを意味的に限定してしまう。
この機関車の部分(日本語における主語と情緒的な意思を宣言する意味ある単位)を「ファンクションフレーズ」、それに続く客車の部分を「動詞フレーズ」と私は呼んでいる。
(今までに登場したファンクションフレーズの例)
| (肯定形) |
| You should 〜 |
あなた、〜するべきだよ |
| You had better 〜 |
あなた、〜した方がいい |
| You must 〜 |
あなた、〜しなければならない |
| (否定形) |
| You should not 〜 |
あなた、〜すべきじゃない |
| You had better not 〜 |
あなた、〜しない方がいい |
| You must not 〜 |
あなた、〜してはいけない |
| (疑問形) |
| Should I 〜? |
私、〜するべきですか? |
| Had I better 〜? |
私、〜した方がいいですか? |
| Must I 〜 ? |
私、〜しなければなりませんか? |
英語では機関車の部分、つまりファンクションフレーズによって列車の行き先まで決定してしまう。この発想を身につけないと、英語は話せない。逆にこの発想さえ身につけたら、英語は簡単に話せることになる。
● ファンクションフレーズという言葉の由来
「ファンクションフレーズ」という言葉は、コンピュータのファンクションキーの名に由来している。ファンクション(function)とは「機能」の意味だが、このキーを押すように、ファンクションフレーズを宣言することで場面や状況に応じた英語表現が即時にできることになる。